監督:今石洋之×脚本:中島かずき×アニメーション制作:TRIGGERによる初の完全オリジナル劇場アニメーション「プロメア」が公開されました!
このタッグはアニメ「天元突破グレンラガン」(2007)や「キルラキル」(2013)と同じでそれだけでアツくぶっ飛んだ展開であることは間違いなくて、そこに期待もあればテンプレ化しちゃってないか不安もあったり、、、「キルラキル」が良すぎたんだよ、最後に制服を脱ぐまでの流れとか衣装と立場を錯綜させて螺旋型に話を盛り上げていく、その強力なエンジンとなる過激でどきつい演出とかもうたまらない。中島かずき脚本は「2転3転しながら物語の縮尺を変える」面白さがあるので、2時間でそこまで持っていけるのかも気になるところ。
声優には松山ケンイチを筆頭に演技派俳優をガンガン使っているので、どう転ぶんだろうか?「劇団☆新感線」のような迫力とパワープレイだとアニメお得意の手法の二番煎じになっちゃうし逆にどうなんだ?みたいに仕掛けが気になる作品です。子育て頑張って本日観にいってきました!
映画『プロメア』ロングPV 制作:TRIGGER 5月24日〈金〉全国公開
- 火消しとバーニッシュのW主人公
- 「グレンラガン」と「キルラキル」を経ての文脈
- 四角と三角の映像体験
- バトルシーンの挿入歌がとにかくアツい
- メチャクチャ声のでかい堺雅人のクレイ
- 目的と手段を交互に変える中島かずき脚本の妙
- 積み重ねの上に成立した作品
火消しとバーニッシュのW主人公
世界大炎上という全世界の半分が消失する未曾有の悲劇が起きた30年後の物語で、突然変異で生まれた炎を操る新人類(バーニッシュ)が存在する世界。バーニッシュは炎を体内から発生、操ることができそれがきっかけで世界大炎上が発生した。その後一部の攻撃的な面々はマッドバーニッシュと名乗り、世界中で大火災を引き起こしている。これに対して高機動救命隊(バーニングレスキュー)の新人隊員ガロ・ティモスは高層ビルの消化活動中にマッドバーニッシュのリーダーであるリオ・フォーティアと激しくぶつかり合う、、、と火消しを行うガロ(松山ケンイチ)とバーニッシュのリオ(早乙女太一)のW主人公で話は進んでいきます。なぜバーニッシュは火災を起こしているのか?バーニッシュを捕らえている自治共和国プロメポリスの司政官を務めるクレイ・フォーサイト(堺雅人)は何を企んでいるのか?というようにこの3人を軸に話が展開していきます。
「グレンラガン」と「キルラキル」を経ての文脈
111分という上映時間ですが、とても濃厚でした。もうお腹いっぱいです。冒頭のバーニングレスキューが出てくるシーンから始まり、マッドバーニッシュとの戦闘ではカメラワークがグワングワンする。弾け飛ぶテクスチャー。そこからバーニッシュの置かれている境遇が描かれ、苦悩する主人公ガロ、かと思いきやそんな暇も与えずリオがブチギレ、ここで2つ目の山場をやったあとは怒涛のバトルシーンオンパレードで目が回る。とんでも展開を畳み掛けてくるシナリオがいい。とにかく酔わせてくれる。
映画という2時間の尺を意識されてか極力人間ドラマを極力除いて、キャラクターの関係性を使っても物語をブーストする仕様になってましたね。というのも主人公のガロは公開前から「グレンラガン」のカミナにビジュアルが似てると話題になってましたが、性格も似てバカで突っ走って見栄はって男前です。なんで、これまでの作品を観てきている人たちは「ああ、こんな感じのキャラなのかな?」って勝手にイメージできてしまう。バーニングレスキューのキャラ構成みたら誰が近距離・遠距離タイプとか、ああルチアは白衣着てるからメカ担当だよねーとか説明なしで観れる。実家に帰ったときの安心感があります。笑
映画『プロメア』冒頭アクションシーン 制作:TRIGGER 5月24日〈金〉全国公開
四角と三角の映像体験
「プロメア」の大きな特徴となっていたのが、ローポリによる舞台構成です。ビビットカラー×ローポリテクスチャーが舞台を埋め尽くす新しい映像体験になってます。
TRIGGERといえば攻めたアニメ演出なので、このぐらいエッジが効いていた方が個人的には好きです。(後半、目が疲れたけども)記号的に四角と三角を使ってたんですが、この図形自体の感触があってもよかったのかなあと。三角を掴んで投げたり、落ちていく四角に乗って暴れたりみたいな。キャラクターとつながっていくともう少し面白かったような。仮面ライダージオウキバ編でマンホール投げるシーンが衝撃だったので、それに引っ張られているのかもしれないけど。まあでもグレンラガンでは銀河投げてたしね、三角も投げて欲しかったな。
バトルシーンの挿入歌がとにかくアツい
音楽が「機動戦士ガンダムUC」や「進撃の巨人」に参加されていた澤野弘之さんで、まあ挿入歌がアツい。「機動戦士ガンダムUC」の盛り上げ曲も大好きで、かかった瞬間にテンションがマックスまで上がるんですよね。
監督の今石洋之さんとの打ち合わせで「劇中歌を使っていこう」となったとあってバトルシーンではガンガン流れてくる。こうなってくると勝手に涙が出てきますよね、音楽だけで泣けてしまう。劇中歌と合わせて台詞の応酬もあるので音響ガンガンで聞き取るのが大変なんですが、キャラクターが記号的なので何言ってそうかはだいたいわかってしまうので、もうディスコ感覚ですよね。盛り上がればいいじゃんって感じです。ディスコいったことないけど。
メチャクチャ声のでかい堺雅人のクレイ
※ここはネタバレを含みます。
俳優もテンション高く演技をしていて、それでいてなめらかに進めるシーンもあったりして総じて僕の印象は良かったです。特にめちゃくちゃな展開を思いっきり突き上げたのが堺雅人の演技がすごかった。声がめっちゃでかい。クレイ・フォーサイトは後半化けの皮が剥がれて悪役となりますが、その時の声の太さが尋常じゃなかった。堺雅人は「半沢直樹」「リーガルハイ」でもそうだったように、豹変するときの切り替え開始のボリュームが強い。一気に世界観に引き込まれます。クレイザーXに乗って出てくる時とかすごかった。パンフレットやインタビューでも「5段階用意していた声量のうち、5段階目まで早々に使ってしまって後半は声帯を気にしながらも精神的に振り切れて演じた」とのことだったので、限界突破した演技だったんだなあと。
堺雅人がクレイ・フォーサイトにどハマりしていた要因として、彼が「秀才」であったところが大きいです。秀才であるがゆえに、人類の危機となると「選民思想」が出てしまったり、バーニッシュに対する社会的地位を意識してしまうがゆえの劣等感だったり、賢いがゆえの狂人性を演じさせるのにぴったりですよね。クレイ・フォーサイトの台詞回しとか考え方はかなり気に入っていて、クレイザーXの特殊武装で攻撃するたびに「これは惑星で土地を開墾するときに使用する〜〜」などとちゃんと実用性を考えて作ったんですよ、って論理的に説明してくる。大義名分がないと行動原理にならないんですよね。「滅殺開墾ビーム」とかこねくり回しがすぎる。説明台詞多すぎ笑
一方でそのロジックにはまって非人道的な行為を正当化していく狂気とかもうたまらんないよね。バーニッシュをマイノリティとして描く際に、迫害するのは「秀才の作り出したロジック」と「都合よく乗っかるウェイウェイ勢」という社会構造を見せつけ、物語の推進力はクレイの勢いに任せるパターン。こういう悪役はやっつけがいがあるんだよほんと。
目的と手段を交互に変える中島かずき脚本の妙
中島かずきさんの得意技といえばそうなんですが、映画でも被せて被せて展開を揺さぶっていく手法はさすがでした。これが観たかったんですよ、これが。
ある目的のために動いていたら、その手段を行ってるうちに新しいことに気づいて、目的が変わっていくという手法。敵が変われば味方が変わるといったようにコロコロ転がしてでっかい話に持ってく展開。観る前に不安だった「時間足りなくて手数が少ないんじゃないか?」といった不安も杞憂で、キャラクターの背景をお客さんに補完してもらうことでガンガン進めてたのはいいよね。もう勝手に同窓会気分で展開に酔いしれてました。
ただ詰め込んだ結果か、後半はテンポアップでとにかく進んでてもう少しタメがあっても良かったんじゃないかなあ、という印象でした。せっかくガロが名乗り好きなので、どっかしっかり区切りを入れてタメを作っても良かったんじゃないかなと。ハリウッド風に音楽で場の雰囲気を切り返して多分、1つ空白があってもよかったかも。まあ畳み掛けられるのも好物ですが、「無理を通して道理を引っ込む」スタイル、嫌いじゃないわ!
積み重ねの上に成立した作品
「グレンラガン」「キルラキル」と趣向は変えながらも面白さの根幹を受け継ぎながら挑戦した作品が「プロメア」だったと思います。
前の作品が面白いだけに二番煎じになる可能性もあったのですがなんてことない、いい意味で期待を裏切ってくれました。映像表現は攻めていたし、話も王道なんで好き好きありそうですが、僕は大好きでした。面白かったなあ。
ではでは!
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- アーティスト: プロメア
- 出版社/メーカー: アニプレックス
- 発売日: 2019/05/24
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