たけとけたと片付かない部屋

製造技術の仕事や家事・育児、趣味について書きます。

人気マンガ「ゴールデンカムイ」の面白さが「銃・病原菌・鉄」で爆増する

どうもたけとけたです。

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『ゴールデンカムイ』キービジュアル (C)野田サトル/集英社・ゴールデンカムイ製作委員会

 ヤングジャンプで連載中で、アニメも第3期までやっている「ゴールデンカムイ」を読み始めました。日露戦争後の北海道を舞台に、金塊をめぐる争奪戦がすごく面白いで。北海道の厳しい自然の中で繰り広げられる命の駆け引きがいいですね。

ゴールデンカムイ 1 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)
 

 本書で特徴的なのは、当時のアイヌ民族との交流です。歴史の教科書では、北海道に住んでいた狩猟民族としか知りませんでしたが、この漫画で狩りに長けていたことや、原生動物の食べ方や共存の仕方、生活様式が鮮明に描かれていているところも面白いです。同じ日本のことでも知らないことはいっぱいあります。

 さらに僕は発見してしまいました。

書籍「銃・病原菌・鉄」との相性が良すぎることにっ、、、

この本を読んでからゴールデンカムイを読むと、アイヌ民族を日本人がいかに滅ぼしたのか?どんなことが起こっていたのかを生々しく感じることができます

アイヌ民族の狩猟知識の豊富さ

ゴールデンカムイの中で主人公と共に行動するアイヌ民族のアリシパさんの狩猟や北海道に生息する動植物に対する知識が半端ではありません。「白樺の木の皮から水が吸える」「鹿の毛皮を被って寒い冬を越える」など、現代人はもちろん、当時の日本人も知らない厳しい自然の中で生き抜く術を知っています。僕たちの知らない当時のアイヌ民族の生活を感じられるのがゴールデンカムイの魅力の一つですね。

 こうみると、アイヌの人たちは能力で日本人に劣っていたわけではなく、狩猟などの専門分野においては当時の日本人よりも秀でていたことが分かります。けれどもアイヌ民族は人口を大きく減らし、日本人は人口を増やしています。この違いはなんだったのか?なぜ日本人がアイヌ民族ととって変わり、逆は起こらなかったのでしょうか?

「狩猟民族」と「農耕民族」

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銃・病原菌・鉄 ジャレド・ダイアモンド著

 その疑問に答えるのが、ジャレド・ダイヤモンド著「銃・病原菌・鉄」です。本の冒頭では、著者がニューギニア人アリに「あなたがた白人は、たくさんのものを発達させてニューギニアに持ち込んだが、私たちニューギニア人には自分たちのものといえるものがほとんどない。それはなぜだろうか?」と問われるところから始まります。ニューギニアも独自の社会を築いてきましたが、ヨーロッパやアメリカのような発展は遂げていませんでした。そして、それは白人が人種的に優れていたからとは言えません。ニューギニア人も彼らの生活様式に関する分野では非常に優れていたからです。

 「銃・病原菌・鉄」では人類発展の格差がなぜ発生したのかを、地政学や言語学を駆使して人類発展の歴史を紐解きます。そして、他民族を滅ぼす原因がタイトルの「銃・病原菌・鉄」です。これらの技術を生み出す背景にあったものが、居住する環境の違いによる、食糧生産の発展速度の違いであったと説明されています。

アイヌ民族は「天然痘」で人口が激減

 「中・病原菌・鉄」は固い話が主ですが、「ゴールデンカムイ」をこの知識を持って読むと興味深いシーンがたくさんあります。

 そのシーンの一つが、あるアイヌの家族が天然痘で亡くなるところです。そこでは、当時流行っていた天然痘に関する説明が書かれていて、「天然痘の流行により、アイヌ民族は人口が激減した」とあります。

 さらっと一文書かれているだけなのですが、なぜアイヌ民族は天然痘で人口が激減して、日本人はそうではなかったのでしょうか?それは、日本人は農耕社会で生まれた病原菌に対して一定の耐性を持っていたからと考えられます。病原菌は、家畜が感染するものが変異して人間に感染することで発生します。また、一定の人口密度があることで人から人に移る病原菌は数を増やすことができます。

 この2つの条件を満たすためには、食用や労働力として家畜を飼っていることと、農耕により食糧生産の生産性を上げることで人口密度を高めていることが必要です。

 日本人は農耕社会を経験しており、病原菌に対して耐性をもつ遺伝子を選択的に残してきました。一方のアイヌ民族は狩猟社会であり、病原菌の感染を経験していません。明治時代からの大規模な日本人の北海道への入植により天然痘が持ち込まれ、耐性を持っていなかったアイヌ民族の多くは亡くなってしまったようです。

蝦夷地における感染症対策 〜19世紀前半の天然痘とアイヌの関わり〜 | 海洋政策研究所-OceanNewsletter | 笹川平和財団 - THE SASAKAWA PEACE FOUNDATION

 結果的に病原菌で日本人がアイヌ民族の人口を減らしたことがよくわかります。そして生活の中では日本人とアイヌ民族が共に協力して生きていく過程で生まれた悲劇です。

 ゴールデンカムイの中でアイヌ民族の生活の様子は生き生きと描かれています。一方で、銃による暴力で集落を奪われてしまう、病原菌で亡くなってしまうシーンもあり、因果を知ると、物語の根底に潜む哀しさを感じられます。

 歴史を知るほど面白いゴールデンカムイ

 ここまで、「ゴールデンカムイ」と「銃・病原菌・鉄」の関連性について書きました。歴史物は背景知識があるとより面白いですね!逆にマンガからのめり込んで知識を深める楽しみもあります。なんといっても、この知識と知識が繋がる瞬間が堪らないです。ドーパミンがジュルジュルで出ます。ジュルジュルでるものか分からないけど。これだから歴史物はやめられない。*1

ということで、「ゴールデンカムイ」と「銃・病原菌・鉄」の併読、おすすめです。「ゴールデンカムイ」は今アニメもやってるのでそちらもおすすめです!

kamuy-anime.com

ではでは!

*1:ゴールデンカムイはフィクション漫画ですので、一部描写は事実と異なります