薄々は気づいていたんですが、僕の書く文章は分かりづらいです。その分かりづらさを痛いほど突いた本がコレ。
本に載っているダメな例が、自分よくやってるやん!ってやつばかりです。そのダメな例を改善しながら分かりやすい、読みやすい文章に変えていく技術が面白い。そして当たり前ですが、すごく分かりやすい。
「自分の文章、なんか読みづらいんだよなぁ」と思っている方におすすめな本書の良かった点を紹介します!
本書の特徴
タイトル通り、大人のための国語です。
本書の特徴として、ゼミのように課題があって考察ののちに回答があります。
例題を読んで課題をやってみると、簡単だと思っていた日本語が使いこなせていないことが分かります。例えば接続詞や、文章の順序を入れ替えて分かりやすくすると言ったいわゆる国語のテストも、案外うまく解けません。この形式のため、意外と日本語分かってないやん!と自覚的になれます。
加えて本書の優れたところは、分かりやすさの説明が論理的で、ルールに則ったものであることです。よくある「作者の気持ちは~」問題の解説のようなけむに巻かれる説明はなく、文章の構造を整理することで何がわかりやすくて、何がわかりづらくしているのかを解説してくれる。これがすごく痛快で、納得感が高かったです。
次は、本書の内容の要約を説明します。
分かりやすい文章とは?
相手のことを考えた文章
文章を書く時は必ず伝えたいこと、書きたいことがあります。では、なぜ書きたいのでしょうか?本来なら、相手に分かってほしいことがあるから文章を書きます。ですが、しばしば書きたいから書くことに陥りがちです。なぜなら書くのはそれだけで気持ちいいんですよね。例えば僕だって、好きなことを気持ちでブログを描き続けています。
書きたい気持ちはモチベーションになりますが、書きたい気持ちを満たすためだけに書いた文章は読み手に分かってもらえません。分かってもらうためには、相手のことを考えて書く必要があります。
相手のことを考えて書くことは難しいです。本書でも、相手のことを考えて書くのはそんなに簡単ではないと書いてます。
自分の言葉が相手に理解されているかについて鋭敏な感覚を持ち、理解されていないことを謙虚に受け止め、理解されていないことを嫌がらずに謙虚に受け止め、理解してもらうにはどうすればいいかを本気でかんがえる。何度も何度も、そんな経験を繰り返さねばならない。何度も、何度も。
とくに知っておくと役に立つ知識や技術があるわけではない。ただひたすら相手のことを考える。それだけである。
なぜ100円でコアラのマーチが買えなかったのかを小学生に説明する
相手のことを考えた文章の練習として、小学5年生に対して税抜き100円のコアラのマーチが100円で買えなかった理由をどう説明するか?という問いがなされます。
これが、かなり難しい。
小学5年生は消費税を知らないし、そもそも税金を知らないかもしれない。単に「消費税が8%だからだよ」と伝えられないもどかしさ。
伝えるコツとして、相手の理解度に合わせることが紹介されてます。国が使うお金を集めるために、「税金」があって、国は税金を使って、建物や道路を造ったりする。消費税は買い物をする時にかかる税金で、今は8パーセントの消費税がかかる。小学5年生がパーセントが分かるなら、100円に8%の消費税がかかると108円になることがわかるので、100円を超えてしまう、、、というように説明する必要があります。
このほかにも、外国人に祭りを説明するにはどうすればよいか?お米の炊き方を知らない中学生に、野外活動の飯盒炊飯をどう教える?など、相手の立場に立って説明する難しさと、そのコツを丁寧に教えてくれます。
筆者がまず強調しているのが、なんらかの言語能力や技術ではなく、「相手のことを考える」という、ただその1点だということ。もちろん相手のことを考えて書くことは面倒ではありますが、慣れてくれば面倒ではなくなってきて、より相手のことを考えることができるようになるとのことです。
言いたいことが整理された文章
技術的な話では、分かりやすい文章は、言いたいことがすっきりと整理されています。すなわち、文章の流れが接続詞で誘導されていて、話題が一貫している文章です。
本書では一見悪くない文章が、文章の順序を変えて接続詞を加えると驚くほどに読みやすくなる例が挙げられています。はじめは違和感を感じなかった読みづらさも、読みやすい文章と比較すると「こんなに分かりづらかったのか!?」と驚きました。このように読者に気づきを与える構成になっているので、分かりやすい文章のポイントをより深く理解できます。
ちなみに、僕の文章は接続詞が少なくて文章のつながりが不親切で、文章の蛇足が分かりづらいことが分かりました。これを踏まえて接続詞を意識して書くと、文章のつながりに論理の飛躍がないか?話題が変わってないか?と自覚的になれます。このおかげで論点の変化に気付けるようになり、文章構成を見直ししやすくなりました。このやり方で会社のレポートを書いたところ、職場の同僚から「すごく読みやすくなったねー」とコメントもらえて改善効果も出てそうです。
どうやって国語力を上げるか?
要約で、文章の幹を捉える
本書では、いくつもの要約の課題があります。大人になってからやって思い出す、学生の頃感じていた難しさ。何が筆者の主張か?何を伝えようとしているか?やってみるとこれもまた難しい。
要約のポイントは、文章の構造を木にたとえると幹・枝葉・根に分けることです。
- 幹:筆者の中心的主張
- 枝葉:主張の根拠、くりかえし、具体例、補足、解説など
- 根:導入、問いかけ
文章は枝葉となっている情報で埋もれていて幹である筆者の主張がどこにあるか一見すると分かりづらくなってきます。そこで枝葉を切り取っていくことで幹の姿、筆者の中心的主張が見えてきます。この文章の枝葉を切り取り幹だけを残す作業が要約です。要約の練習をすることで言葉の重みに対する感覚が鍛えられ、より速く、より正確に内容を理解することができるようになります。これは同時に、分かりやすい文章を書くために自分の主張とそれを取り巻く情報を整理して分かりやすく読み手に伝えることができるということです。
僕が読んで興味深かったのは、文章の根となる問いかけ、導入についての説明です。
文章はたいていの場合になんらかの求めに応じるために書かれている。何か問題が立てられ、その問題に答えるためにその文章が書かれることも多い。
(中略)
そこで、文章を要約する前に、「いったいこの文章はどういう問いかけや要求に答えようとして書かれているのだろう」と考えてみる。つまり、文章の根をはっきりさせるのである。根が捉えられれば、何が幹かもはっきりしてくる。
つまり、筆者の中心的主張を読み解きたければその主張の元となった問いかけを探せばよい、ということです。これを知るだけでも、筆者の言いたいことは何なのだろう?と迷子になりにくくなります。
このように、文章の幹・枝葉・根を区別する感覚を養うことができれば、文章の流れが整理された文章を書けそうです。
本当にわかってもらおうとしていますか?
自分の伝えたいことを文章を書いて伝えるのは難しいです。でも、それで諦めて思いがあればいいんだ!と開き直っては元も子もなかったです。もちろん、文章を書く上で自分の主張、思いは必要不可欠ですが、それだけでは読み手には伝わりません。
筆者が分かりやすい文章(本書では「達意の文」と表現しています)を書く一番重要なポイントは、相手に問いを共有してもらうこと、としています。
すなわち、相手に問いを共有してもらうこと。自分の言いたいことを書く前に、それがこたえになるような問いを読み手に共有してもらう。それが文章を書く上でなによりもー過不足なく、明確に、相手に合わせた言い方で書く、といったことよりもーだいじなのである。
私事ではあるのですが、僕は自分の意見が理解してもらえなかったときに「あーみんな僕の考えに追いつけないんだなあ、仕方ないな」みたいな不遜な思いで終わることがままあったんですが、本書を読んで反省しました。その態度は、ダサいですね。本当にわかってもらう努力をせずに、「なんでわかってくれないんだよう!」と叫ぶ子供みたいだったと思います。これからは態度を改めます(汗
最後になりますが、分かりやすい文章をどうやって書いたらいいか悩んでいる方は、ぜひ本書を手にとって例題を考えてみてください!気づきがあって、とても参考になりますよ!
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