http://www.toei-anim.co.jp/movie/precure/info/
2歳の娘がプリキュアにはまっているので、「映画HUGっと!プリキュア・ふたりはプリキュア オールスターメモリーズ」を観てきました。プリキュアシリーズは初代「ふたりはプリキュア」が始まるのをちょうど観ていて、「女の子がドラゴンボールみたいな戦闘をしている」描写が衝撃だったことを覚えています。
そんなプリキュアですが、今年15周年だそうです。そりゃあ歳もとるよねー。
そこで娘も好きなことですし、映画を観てきました!
そして、終始号泣でした(泣
ほんとーにね、よかったです。なんかもう嬉しかった、HUGっと!プリキュアで見せてくれたプリキュアも育児も大切!という枠からさらに一歩踏み込んだ作品でした。
どんな映画?
今回はこれまでのプリキュア全55人が登場する映画です。あらすじは「プリキュアみんなの想い出がミデンに奪われてしまって、ベビープリキュアになってしまう。キュアエールこと野乃はなちゃんとキュアブラックこと美墨なぎさちゃんがベビープリキュアになってしまった仲間を想い出ので元に戻す。そしてHUGっと!プリキュアとふたりはプリキュアの7人でミデンを倒そうとするが、野乃はなはミデンの救うために倒す以外の方法を探そうとする・・・」というお話です。
「みんなとの大切な想い出はぜったいに渡さない!」
な・な・なんと!プリキュアオールスターズがちっちゃくなっちゃった!それは[プリキュアの想い出]を狙うミデンのしわざ!想い出をうばわれると、これまでのことをぜ〜んぶ忘れちゃうみたい!?しかも残ったプリキュアは「HUGっと!プリキュア」と「ふたりはプリキュア」だけで・・・大ピンチ!!こうしちゃいられない!みんなで力を合わせて、キラキラ大切な想い出を取り戻しにいこう!
引用:http://www.toei-anim.co.jp/movie/precure/info/
ミデンというキャラクターが映画オリジナルで、想い出を奪って自分のコレクションにする能力を持っています。(これが物語の核になります)ミデンは奪った想い出を自分のものにできるので、ずっと過去作プリキュアの決め台詞を言っていて、かわいいキャラクターです。
映画の中では総勢55人のプリキュアが各々の必殺技で戦うシーンもあり、過去の名場面が流れるシーンもあって、今作のファンだけでなく過去作のファンへの思いも詰まったいい映画です。おしりパンチや、あざとイエローとか懐かしいので今作だけでなくいままでのプリキュアが好きだった方にもお勧めできる作品です。
ただこの映画のすごいところは、オールスターであることだけでなく「育児と本気で向き合った演出」であることです。
※ここからネタバレを含みます。
序盤「育児って辛い時もあるよね。。。」
序盤は仲間のベビープリキュアにされてしまって、はなちゃんとなぎさちゃんがベビープリキュアのお世話に翻弄されます。ベビープリキュアを数人お世話しないといけないんですが、勝手にどこかに行ったり、終始泣き叫んで靴を蹴り飛ばして何回も拾わないといけなかったり、嘘をついたり、隙あらば逃げ出したりと翻弄されます。
育児をしたことの人であれば「あるある」と思う展開じゃないでしょうか?
劇中でも、子供が嫌いなわけじゃない、でもあなたのためを思ってやっているのにうまくいかず、つい声を荒げてさらに状況が悪化して、、、と育児に奮闘していると出会う場面なんですよね。
それでも、みんなのために頑張ってるんだよってわかってもらえて、応援してもらいながら戦うって、、、いや子供向けなのにこんなに親に寄り添ってくれるアニメあるの?親向けすぎない?ともうずっと泣いてましたよね。「あるある〜」って泣いていました。隣に座っていたいつもお世話される側の娘は普通に観てましたけど(そういうとこだぞ!
ベビープリキュアでも、みんな特徴を掴んでて可愛い
引用:http://www.toei-anim.co.jp/movie/precure/movie/
キュアエールが戦うところも「私だけが辛いんじゃないんだ、みんなはもっとつらいんだ。。。」ってどんだけいい子なんだよ。。。
プリキュアのいいところは、育児のしんどさを悲観的にしたり問題提起するのではなく「キュアエールならこうする」という形で物語を展開していて、「みんなこうあるべき」には絶対にしないんですよね。
だから育児はつらい、とか、他の人のサポートのない社会がおかしいとかギスギスした方向に行かず「こういうとき、育児ってつらいよね。。。」とただ共感してくれるだけなんです、物語が沁みるよ。。。
中盤「大好き(思い出)があるから頑張れる」
中盤では再びピンチになるのですが、そこでの展開がすごかった。
子供にはミラクルライトというグッズが渡されていて、それでプリキュアを応援するようになってます。今回はみんなベビープリキュアにされていて、想い出のパワーがないと元に戻れないんです。HUGっと!プリキュアに出てくるハリーやはぐたんでは、過去のプリキュアとの思い出が足りません。そのときハリーがひらめきます。
「そや!映画館のみんな!みんなはプリキュアと想い出がいっぱいあるやろ!ミラクルライトを使って、みんなの自分の大好きなプリキュアを応援してプリキュアをもどしたってくれ!」(セリフは意訳です)
粋じゃないですか!?
観客がそれぞれ好きなプリキュアを応援することで自分の大好きなプリキュアが力を取り戻すって、ファンサービスがよすぎるよ!そのあともそれぞれのプリキュアの登場セリフと、それぞれの必殺技を展開する構成になっていてさすがでした。
ハートキャッチプリキュアのキュアマリンのこのドヤ顔
引用:http://www.toei-anim.co.jp/movie/precure/movie/
想い出でベビープリキュアがプリキュアに戻れる、って深い意味を持っています。子供を育てることも、「同じ時間を過ごして、同じ想い出を積み重ねる」ことです。子育てというと勉強だったりしつけだったりやらないといけないことや、おもちゃやいい経験を与えてやることが必要だーとか色んな情報が親には集まってきますが、完璧にこなそうとしたらパンクしてしまう。
でも本当に大切なことはそこではなくて、「同じ時間を過ごして、同じ想い出を積み重ねる」ことなんだよ、と。その思い出が辛い時に力になってくれるんだよ、だからとても大切なんだよ、と子育ての原点にたちかえらせてくれます。思わずハッとしてしまいました。
終盤「思い出があるから頑張れる、でもなかったら?」
終盤はミデンに押され気味だったプリキュア達が反撃に出ます。ミデンは想い出を奪って自分のものにできますが、他人の想い出なわけで、自分の身になっていない。プリキュア達が苦境に立たされても頑張れるのも、先ほど書いたように想い出がたくさんあるから踏ん張れる。
でも、ここで一つの問題提起がなされます。
「いい思い出がない人は、こういうとき頑張れるんだろうか?」
映画オリジナルキャラクター 「ミデン」
引用:http://www.toei-anim.co.jp/movie/precure/movie/
ミデンは人から想い出を奪いますが、自分の想い出はありません。実はミデンはフィルム式のカメラから生まれた亡霊です。いろんな写真を取れると思って生まれてきた。ですが実際は使ってもらえず、一度も写真をとってもらうことなく忘れられてしまう。
ミデンの心の中には、楽しい、嬉しい想い出がなく、ただただ悲しい、寂しい思い出があるのみなんです。だからどうやったら楽しくなれるのか嬉しくなれるのかわからなくて、人から奪うことしかできなくつまた。
ミデンは周りの人間関係に恵まれた人たちの対比として「親や周囲から愛されなかった子供達」を暗に意味して作られたキャラクターのようにみえます。物心ついたときから愛されること、楽しいことがない人生だったら、どうなってしまうんだろうかと?(例えば、ネグレクトや暴力などの虐待を受けていたら?)
マイナスの感情しか知らなければ、人のものも平気で奪えるし、自分が嬉しいとか楽しいと感じるにはどうしたらいいかもその本人にはわからないんです。だから本人は楽しくもないのに悪いことばかりしてしまう。
このときにキュアエールのはなちゃんはミデンの心の中の虚しさに気づきます。そして、一生懸命心を開いてもらおうと頑張る。
ミデンははなちゃんに語ります。
「自分は楽しい思い出をいっぱい撮りたかったんだ、でも一度も撮れなかった」
はなちゃんは言います。
「それなら、これから一緒に撮ろう、一緒に楽しい思い出をいっぱい作ろう」
その気持ちが通じて、ミデンは亡霊ではなくなり元のカメラに戻っていく。最後ははなちゃんがそのカメラを使っていっぱい思い出を撮るというエンディングです。
これは「思い出に恵まれない(親や周囲に恵まれない)子供たちもいる、そんな子供たちには寄り添ってみんなで助けてあげないといけない」ということではないでしょうか?つまり社会で子育てをすることも大切だということを意味していそうです。
虐待を受けると脳の回路に悪影響が出て、成人してからも社会にしづらくなるという検証結果もあります。一方で適切な治療や愛に出会うことができれば脳も修復できるとされています。
家庭だけでなく社会で子育てをする。社会的なセーフティーネットの必要性も暗に説いているんです。どんだけ深い内容なんだ。。。
幼児教育と本気で向き合っていた作品
「HUGっと!プリキュア」の情報公開がされた時も「育児をまた女性だけのものにしてしまうんじゃないか?」と不安視されていましたが、プリキュア製作陣は育児に対して本気で向き合って、何が子供たちにとって大切かを本気で考えて作っていることがテレビを観ていてもよくわかります。
この映画ではテレビでは描いてこなかった「育児のネガティブな側面」も描写しながら育児において製作陣が考え抜いたものを描いていたんだと思います。
約70分の間に「育児って楽しいけれど辛い時もある」という親の気持ちに寄り添い、育児「想い出を積み重ねること」が大切なんだと示し、家庭だけでなく社会全体で育児をしていく必要があると説いている。こんなにてんこ盛りなのにエンターテイメント性とオールスターとしてのファンサービスを目一杯やっているんです。
プリキュアどんだけすごいんだよ!
テレビ版では育児に関してポジティブな面の描写を中心にネガティブな面を描いてきていないんですが、これはテレビという媒体では「たまになんとなく観る層」や「前回の話を覚えられない年齢層」 に配慮していそうですね。話の繋がりがわからない状態でネガティブな情報を受け取ってしまうと、それが悪影響になるかもしれないと。なので映画では一つ踏み込んだテーマに挑戦している。バランス感覚もテレビ同様素晴らしいです。
ほんと、みんなに観て欲しい映画です。こんなに感想書くことになるとは思わなかった。
ではでは!