たけとけたと片付かない部屋

製造技術の仕事や家事・育児、趣味について書きます。

三菱ケミカル育休記事に思う、化学メーカーの子育て事情

どうも、ご無沙汰してます。たけとけたです。

先日こんな記事が飛び込んできました。

www.huffingtonpost.jp

僕も化学メーカー勤務で体質が似ているところもあるようなので、「こういう会社が増えたらうちももう少し良くなるだろうなぁ」と応援したくなりました。

一方で、抱えている構造も似ているような気がしたので自分の務めている会社で起こっていることと比べながら、現状抱えている問題点について考えてみます。

日本一規模の大きい化学メーカー「三菱ケミカルHD

三菱ケミカルHD20174月に三菱ケミカル、三菱樹脂、三菱レイヨンが統合した会社です。その規模は日本の化学メーカー1位です。自動車業界で言うところのトヨタですね。

名前の通り三菱財閥系ですので、資金も潤沢で多岐にわたる事業展開をされています。化学メーカーは小粒なところが多いので、その規模を活かして業界内でも存在感を活かしている印象です。

登場人物のポジションのイメージ

登場人物のポジションを一般化するとこうなります。

①山川さん:コーポレート研究

②山内さん:本社勤務スタッフ

③光成さん:事業部研究or製造職

コーポレート研究は割と大学研究室に近い空気で研究できるところです。事業部研究は商品の利益を出す研究職になります。工場とか本社勤務スタッフはどこの会社でも同じような総務や人事、営業、広報など一般的な会社機能の仕事を行っている人たちですね。

この記事からわかること

この記事を読んで、自分の勤めているメーカーも同じだなあと思ったのは下記3点です。

  1. 大企業は最近女性に優しい
  2. 今後の課題は工場勤務
  3. マネジメントクラスにはまだまだ浸透してない

順を追って説明します。

1.大企業は最近女性に優しい

本記事のインタビューでは、女性2人と男性1人がインタビューを受けています。女性2人はどちらも「育休は問題なく取れた」とコメントされています。

山内:私の職場は育休を取りやすい雰囲気だったので、問題はありませんでした。

山川:研究所では過去に育休を取得した女性の先輩研究者も多く、周りの人を含め、特に問題なく育休を取るようになっています。

 

一方で男性はなかなか取りづらそうです。

光成:私が働いているのは事業所ですし、男性ということもあり、何となく取りづらい雰囲気はありました。そのため、上司以外には育児休職ということをあまりオープンにせず、連休に合わせた形で1週間の育休を取得しました。

今回紹介されている光成さんの育休取得期間も1週間と長いわけでもないです。ここから「男性主体の会社での男性の育休は依然ハードルが高く、まだ改善にもいたってなさそう」と見ることができます。

 どこのメーカーも同じ傾向があるかと思いますが、大学の理系学部の男女比率と同じように男性中心の会社の傾向が強いです。

 それに加えて最近のトレンドで、男性上司の女性部下の扱い方にかなり気を遣っている印象があります。大企業であれば大きな失敗さえしなければ定年まで勤められますが、セクハラ・パワハラが絡んでくると報復人事にあいます。なので余剰人員が比較的揃っている大手であれば育休取得、雇用継続なんてのはノールックでOKにしておかないといけない。

 じゃあ人員不足分はどうするんだ?ってのがあるんですが、大抵は残りの部下(大体は男性)に多く働いてもらうか、派遣の人に頑張ってもらうか、人事部に補充を依頼する形になります。また忙しい部署だとトラブルになるかもしれない、ということでできるだけ女性をそのような部署に配置しない人事もありますね。

 このようにメーカー大企業側はかなり女性に気を遣う体質に変わりつつありますね。

2.今後の課題は工場勤務 

 一方で過酷な工場の現場や海外赴任などは男性に充てられる可能性が高いので、育休支援制度が整っていても実質とれないような状態になる可能性はあります。また地方に行くほど夫が働いて妻は専業主婦の形態が多く、中高年の方の意識変革も進んでいないんだろうなと。光成さんの話にある「忙しい事業所だったら難しかったと思います。」というのも本当で、工場勤務で忙しい部署に当たってしまうと大変です。

 それだと割りを食う人が文句を言うので、後述の我慢した人が報われる仕組みがあったりします。

3. マネジメントクラスにはまだまだ浸透してない

 日本企業の幹部には女性が少ないことが指摘されるようになって久しいですが、それは単に女性が優秀でないわけでも明らかな女性差別があるわけではないです。 1)2)の体制女性の受け入れを行なっているからこそ、「女性の幹部職がなかなか生まれない」状況があります。

 それは2)のような多忙な部署に進む男性にはそこで生き残れば昇格の可能性が高くなるように、頑張った人が報われるようにすることで不平等感をなくす人事が行われているためです。複数部門の経験や海外赴任の経験を昇格要件に入れている部分もあり、会社の要求に対して我慢したことに報いる形で昇格が行われることも多いです。

 逆に言えば1)の方針で徐々に女性社員は増えてきていますが、マネジメントクラスや幹部候補には「しんどいことを我慢してやったかどうか」というガラスの天井があります。育児と両立しながら働いてきた女性が独身で働き続けた男性や専業主婦を家族荷物男性に比べて会社の理不尽な要求に多く応えることは困難なんですよね。結果的に昇格要件を満たさずになかなかトップクラスには昇格できない状況があるのが現状です。

 

 メーカー、特に化学メーカーは人材の流動性がそこまで高くないメーカーがほとんどです。現在の50代の幹部は男性ばかりで、サービス残業を好き放題やってキャリアを築いてきたばかりです。そんな男性方は海外駐在で昼夜問わず働く、新規プロジェクトメンバーと寝食を共にする、みたいなことが大好きなんですよね。これも合間ってなかなか幹部への女性登用が進んでいないように思えます。

今後の育休制度の課題

この記事は三菱ケミカルHDの人事の方が企画したので組織改革を狙ってやっていると思います。この記事を読んで次に期待したいところは「貢献ではなく適材適所」の登用制度にできるかどうかですね。

 記事内でもあるように、マネジメントクラスの育児に対する理解と、それを実践してきた人がいるかどうかは組織雰囲気に大きく影響します。そのために女性登用を!育休を取得した人の登用を!となるのですが、従来の「会社にいかに貢献してきたか?」の指標では労働時間の自由度から男性に軍配が上がってしまいがちです。

 もともと昇格させるのは上のポジションでさらに成果を出してもらうためですよね?過去の実績を参考にするのはもちろんですが、大事なのはそのポジションにどんな人を据えるのが一番効果的なのか?だと思います。

 女性の働き方改革を中年男性に決裁権を持たせて進めようとしたり、IT部門のトップにPC使えない人を持ってくるのでなく、その分野に適する人材はだれか?の視点で登用できるようになればこのガラスの天井もなくなっていくだろうと感じます。

 この辺りは自分が今勤めている会社に対しての要望だったりもするのですが。。。それでもこういった対談記事を出せる辺り、さすがなあと思います。

ではでは!