たけとけたと片付かない部屋

製造技術の仕事や家事・育児、趣味について書きます。

国産バナナの予定された奇跡と、趣味であることの強さ

どうも、たけとけたです。

 農業新時代 ネクストファーマーズの挑戦、を読みました。現代の農業分野で活躍している方がのインタビュー集です。もともとNewspicksでの対談記事を一冊の本にまとめたものです。

農業新時代 ネクストファーマーズの挑戦 (文春新書)

農業新時代 ネクストファーマーズの挑戦 (文春新書)

  • 作者:川内 イオ
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2019/10/18
  • メディア: 新書

 この本がすごく面白い。農業×テクノロジーの掛け合わせによるイノベーションの実例も面白いし、農業の高収益化に関するヒントもたくさん載っています。

この本を読んで強く感じたことは、

趣味のように仕事できることの強さ

 これに尽きると思います。特にこの印象を受けたのが国産バナナ「もんげーバナナ」を開発した株式会社D&Tファームの取締役・技術責任者の田中節三(せつぞう)氏のエピソードでした。

「もんげーバナナ」が生まれるまで

 バナナは日本では主に輸入品です。熱帯地方での植物であり日本では栽培されてきませんでした。ですが田中節三氏は仕事で海外を飛び回っている時に、5000年前には寒冷地域でもバナナが生育していたことを知り、岡山県でバナナの栽培方法を検討し始めます。40年かけて、5〜6億円の私財を投じて見つけたのが凍結解凍覚醒法であり、これによって耐寒性のある美味しいバナナを国内で生育できるようになりました。「もんげー」は岡山弁で「すごい」を意味しており、もんげーバナナは国内で育つだけでなく成長速度は2倍、栄養価も高い文字通りすごいバナナです。

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バナナの研究は趣味

個人で40年、5〜6億円の私財を使って開発するなんて僕には想像できませんでした。本人曰く、バナナが好きで趣味でやっていたそうです。

「例えば、プロの漁師は計算するでしょう。燃料代をみながら、今日はこれぐらい取れたら日当が出るとか。だから、無茶はしない。でも魚釣りが好きな人はね、さっむいお正月の元旦から釣りにいくわけ。マニアだったら、海が荒れとる日なら大物が底から上がってくるかもしれないと思って海に行くわけですよ。釣れなくてもいいわけ、それは趣味だから。わしにとっても、これはいわば趣味です。好きで研究を続けてきたら、シーラカンスが釣れた。そんなもんじゃろ」 趣味、ですか? 「そう。趣味だから時間制限、予算制限、ノルマもない。好きな時にやって、疲れたら休めばいいし、金がなかったらやめときゃいい。」

 この部分がとても好きです。仕事なら絶対にやらないことが趣味で達成される感覚。ブロガーさんにも好きで書き続けてたらそれ自体が強みになっている方を見ているので、感覚として納得できます。失敗する、途中でやめてしまってもOK、楽しかったら続ける、こうやって好き勝手進められると強い。田中節三さんがおっしゃるように本業がしっかりしてたから達成できたことです。

  • 本業:一定の利益を計算して出す→結果重視

  • 趣味:自分の好きなようにこだわる→過程重視

 この形は会社勤めの人が目指す人生モデルのひとつだと思います。仮にバナナが一代で完成しなかったとしても、そのプロセスを楽しめれば無意味にはなりません。プロセスを楽しめる状態を作り出すことが大きな壁を超える原動力になってます。

もう一つ興味深かったのは、田中節三氏が寒冷地でも育つバナナを作れることを確信していたことです。

「未来を作り出す」センスメイキング理論

経営学にはセンスメイキング理論というものがあります。 センスメイキング理論をよく表しているのはこのストーリーです。

ある時、ハンガリー軍の偵察部隊がアルプス山脈の雪山で、猛吹雪に見舞われ遭難した。彼らは吹雪の中でなす術なく、テントの中で死の恐怖におののいていた。その時偶然にも、隊員の一人がポケットから地図を見つけた。彼らは地図を見て落ち着きを取り戻し、「これで帰れるはずだ」と下山を決意する。彼らはテントを飛び出し、猛吹雪の中、地図を手におおまかな方向を見極めながら進んだ。そしてついに、無事に雪山を下りることに成功したのだ。しかし、そこで戻ってきた隊員が握りしめていた地図を取り上げた上官は、驚いた。彼らの見ていた地図はアルプス山脈の地図ではなく、ピレネー山脈の地図である。

 先の見えない状態において、自分が信じられる道筋があれば、先に進むことができ、結果として大きな成果を出せることを示唆しています。  もし寒冷地でバナナが生育されていた歴史を田中節三氏が知らなければ、きっと40年もの歳月をバナナの開発に費やすことができなかったはずです。途中で何度も無理だと感じた瞬間があったはずです。それをやり遂げた必ずできるという確信を持ち続けたことこそが素晴らしいと思います。

 センスメイキング理論は、先行きの見えない起業や新規事業開発などの分野において重要であると言われています。「この方向に進めば必ず結果がついてくる」と信じられなければ、最初の一歩も踏み出せないし歩き続けることができません。未開の地を目指して進み続けるための原動力となるものは理念やビジョンだと言われています。ただ何の根拠もないものを人はそう簡単に信じることができません。ビジョンは具体的にイメージできなければ信じ抜くことはできないです。

 バナナが寒冷地で育つエピソードが妄想を確信に変え、好きなことであるからこその原動力でビジョンに向かって邁進し続ける。 困難な目標を成し遂げるための本質ですね。

最後に

他にも、農業にまつわるいいエピソードが並んでいるのでぜひ読んでみてください! ちなみに、経営理論についてはこの本がお勧めです。センスメイキング理論もこの本で知ることができました。分厚いですがそれに見合った骨太な理論を多岐に渡って紹介されています。

世界標準の経営理論

世界標準の経営理論

  • 作者:入山 章栄
  • 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
  • 発売日: 2019/12/12
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

ではでは!